集合住宅の光回線を比較する際の予備知識
前回の記事では東海4県の戸建て建物で利用できる光インターネット回線を紹介しました。今回からは集合住宅などの施設で利用できる回線サービスを紹介してゆく予定ですが、その前に予備知識として集合住宅向けのインターネット回線は建物のライフライン設計や建築構造によって大いに影響を受けてしまいますので、その仕組みの基本を押さえておく必要があります。
本来の光インターネット回線というのはFTTH(Fiber To The Home)のことを言うのであって、よく見かける集合住宅の共有部分までは光ファーバーを引き込むことができても、そこから各住居の中までは電話線などのメタルケーブルを使って通信する方式は光ファイバーが部屋の中まで届いていませんからFTTHとは呼べず、いわば「疑似光回線」です。
部屋内まで光ファイバーのFTTH方式
現在では多く見られるようになった部屋内まで光ファイバーで結ぶFTTH方式はNTTが2009年からサービスを開始しましたが、当時の光ファイバーは半径50ミリメートル程度までしか曲げることができず、建物そのものにケーブルラックやや通信専用のダクトが通じていないと部屋内まで達することができませんでした。最新の光ファイバーは半径10ミリメートル程度までカーブしても破断しないように作られ、内径10ミリ程度の電話配管内にも光ファイバーを重複して通線できるため利用できる集合住宅が飛躍的に増えてきました。
にも拘わらず光配線方式が使えない集合住宅は建物の設計・施工に問題があり、特にバブル期後期に施工された手抜きとしか思えない民間マンションに多く見受けられます。オイラの知る限り公営住宅やしっかりしたデベロッパーが施工した集合重々宅においては光配線方式を導入することが可能です。
にも拘わらず使えない建物は、ひかり配線方式の現地事前調査の際に通線スキルのないスタッフによって導入不可能とされてしまった建物です。NTT西日本の現地調査時にはひかり配線方式でも後述のVDSL方式でも営業担当者のインセンティブが同額で、工事担当者も2倍以上手間が掛かるひかり配線方式を毛嫌いして「ひかり配線方式導入不可」と決めつけてしまった不運な建物もかなり目にしてきました。
このようなケースに当てはまってしまったと考えられる建物の方は個別にコンサルさせて頂きますので「お問い合わせ」よりご相談下さい。メールや電話にて連絡します。個人情報尊守。
光ファイバーは専用線ではありません
前掲の図では光ファイバーが分岐しているように見えてしまいますが実際には光ファイバーをたこ足配線のように増やして接続することはできません。しかし、プリズムを使うと光が色別に分離するのをご存じのように光の色は波長によって変化しますので、一本の光ファイバーに複数の波長のレーザー光線を流し、スプリッタという分光器で複数の光信号を取り出すことができます。
2016年頃KDDIが光ファイバーに「16色のレーザー光線を集約して伝送することに成功した」というニュースが一瞬報道されましたがその後は一切出てきませんでした。今日調べてみたところ、その後の進展が記載されていましたのでこちらに紹介します。
つまり、現状のHTTHは一本の光ファイバーを4×4=16軒(一例です)として利用されています。それでも高次元のインターネット環境を構築できるのです。
建物まで光ファイバーのVDSL方式
VDSLとは「Very high-speed Digital Subscriber Line」または「Very high-bit-rate Digital Subscriber Line」の略語で、建物まで届いた光ファイバーの信号を高周波電流の信号に変換して電話線やLANケーブルを通じて各部屋内へ送ることで高速インターネットを使えるようにした方式です。
ADSLに次いで集合住宅でのインターネット回線を高速化する方式で、韓国より遅れて2002年からNTT他が提供を開始しました。ひかり配線方式が不可能な建物では現在最有力のインターネット環境ですが、通信の5G化が進んでくれば徐々に消えていく運命でしょう。
疑似FTTHの中でも共有部から各ユーザーまでをLANケーブルで結ぶ方式はかなりのスピードが出ますが殆ど存在しません。多くのケースでは既設のアナログ電話線を併用するためノイズによる影響を受け、数十Mbpsが限界ですし、100戸以上の大型マンションでは光信号を高周波信号に変換して各戸に送る集合装置に近い部屋ではスピードが出ても高層階や離れた部屋など100メートルを超えたりすると下りでも10メガも出ないことがあります。ちょうど昔のADSL通信がNTT局舎の近辺でしか使い物にならなかったような現象です。分かり易く表現すると、管理室などMDF(電話分電盤)のあるところにNTTビルがあるADSL回線のイメージです。
このような光インターネット回線を、私たち業界関係者は「疑似FTTH」または「疑似光回線」と呼んでいます。NTT関係者はISDNをINS(インス)と読んでいたように独自にFTTにB・C・Nを付けて呼び分けているようですが一般的ではありません。詳しくはNTTが紹介しているFTTHとは?をご覧下さい。
コメント