アメフト傷害事件の本質はこれだ
連日報道されているアメフト事件は、起こるべくして起こった。だが、どこの報道機関も本質の部分をほったらかして、表面上の責任問題ばかりに論評が偏ってる。
アメリカンフットボールのクォーターバックというポジションは、このチームスポーツにおいては極めて重要なポジションで、いわば司令塔の役割も兼ねていて、勝敗の鍵を握るキーマンである。ということを念頭に置いて読み進めて頂きたい。
日本でのアメフトは未だ歴史が浅くて馴染みのない方も多いと思われるが、本場のアメリカでは「クォーターバックを潰してこい」程度の指示というより命令はごく当たり前のことなのだ。オイラが以前観たアメリカ映画の中でも、監督が「あいつをぶっ潰せ!」というような言葉を叫んでいたような記憶もある。日本語訳のテレビ放映用の映画だったので、原語ではなんと言っていたのかはっきりは分からないが、確かクォーターバックの青年が主人公として活躍する映画で、相手チームの監督が主人公さえいなければ試合に勝てると確信して自チームの選手にハッパをかけていたシーンだった。
何が言いたいのかというと、アメフトの監督やコーチがそのような指示を出すのはごく当たり前なのだ。決して日大の監督やコーチだけに限らず、しごく当然の戦術であって特殊な例ではないのだ。但しスポーツである以上、ルールがあるのは当たり前でボールを持っていないクォーターバックにタックルするなんてのは、サッカー同様に悪質な違反行為である。監督やコーチの思いを代弁すれば「おぃおぃ、誰もボールを持ってない選手にタックルしろなんて言ってないだろ」だ。
関西学院大学クォーターバックの選手にしても、自分が常に相手から狙われている位のことは十分承知しているし、味方もガードしてくれる。ボールをキャッチしてからパスを出す時は相手の動きを警戒し、少しでも早くボールを手放すのが鉄則だ。逆にボールを持っていない時はノーガードに近い状態だ。何度も放映されているように、それをあろうことか後方からタックルするなどということはあり得ないし、あってはならない。
日大選手の勘違いがこの事件の原因では?
日大の監督やコーチが選手にどんなハッパをかけたのかが分からないが、それを聞いた選手達はどんな手段を使ってでも相手のクォーターバックを潰さなければ……と思い込んでしまったのではないだろうか。このような緊迫した状況下でまともな判断ができなくなりタックルしてしまった。人間としての一番基本的な道徳観念をしっかりと植え付けないで社会に出してしまった日本の社会構造にも責任はある。そして、当事者である日本大学の監督・コーチは勿論、この選手に関わっていた全ての人たちにもあるのではないだろうか。
あえて加害選手の将来にも期待する
だが彼は素晴らしい実務勉強の機会を得たのだと思う。もし今回の事件がないまま年齢を重ねるようなことになっていたら、それこそ「自分の勝手な思い込みで殺人を犯す」ような幼稚な精神構造のままで社会に出ることになったのだろう。記者会見の映像も見たのだが、あの場で自分の非を認め謝罪した姿は立派だった。彼はあの場で、生涯に渡って犯罪を犯すようなことのない立派な成人になった、と感じたのはオイラだけではないだろう。彼には今回の体験が最大の社会勉強になったろうし、これから先の長い人生に必ずや好結果をもたらしてくれるものと信じて見守っていきたい。