地方ローカルの牛丼店は数あれど、全国的にはこの御三家だろう。オイラも外出時にはちょくちょくお世話になっているが、何と言っても「早い・安い・旨い」が魅力だろう。ところがすき家での過酷なオペレーションに耐えきれなくなったアルバイトのサボタージュによる休店問題が発生するなど、どのチェーンでもメニューの多角化が進行中で客単価を上げることに血眼となってしまった。
暑い時期に差し掛かるとどこもかしこも「うなぎ」を売りたくて売りたくてしょうがないようだが、オイラは牛丼屋でウナギを食べようとは思わないし、今後も決して注文することはないだろう。このようなファーストフード店で数少ないウナギを消費してしまうと、技術を持ったウナギ専門店に購入されるはずだったウナギが減少し、本当に旨いウナギの価格高騰に繋がってしまうと考えるからだ。勿論、どこでウナギを食べようと皆さんの勝手ではあるのだが。
牛丼発祥は吉野家から
吉野家と言えば誰しも知っている牛丼チェーンの老舗。オイラが最初に出会ったのが1980年以前の事だったと思うが、星ヶ丘で今でも営業中の吉野家打越店。貧乏学生にとってはまさに早い・安い・旨いで非常に感激した。
ところがその吉野家の牛丼が経営上の事情があったにせよ、アメリカ産の牛肉を「フリーズドライ」製法の牛肉に変更したと思われるタイミングで極端に不味くなってしまい、味覚が割と敏感だったオイラは見向きもしなくなった。案の定しばらく後になって「吉野家倒産」のニュースが流れた。
その後再建された吉野家は原材料を元の形態に戻すなどの健全化を経て正しい味を取り戻し、1990年頃コンビニの夜間配送を終えた後の見明に立ち寄る吉野家の「けんちん定食(初代)」は500円でご飯・けんちん汁・牛皿・お新香、それに大きな湯飲み茶碗で出してくれた熱くてホントに「旨いお茶」にどれだけ救われたことだろう。(写真はWikipedia:右が味噌けんちん汁)
初代けんちん定食というのは、2000年以降に出されていたものと違ってけんちん汁が味噌仕立てだったから、身体に良いことは当然で近年ようやく見直されつつあるが、2010年代に提供されていたものは味噌仕立てではなく、醤油出汁を使ったものにランク下げされてしまい、価値が大幅に下がってしまった。この変更に驚いたオイラが調べてみると、何と原因は「けんちん汁が味噌仕立てなのはおかしい、こんなのはけんちん汁ではない」というクレームをつけたバカのせいだった(笑)。吉野家も吉野家で「味噌けんちん汁」と改名すれば良かったものを、味噌を使うのを止めてわざわざ「本来のけんちん汁」にレシピを変更してしまった。当然のごとく味噌派のオイラ達は注文しなくなる、で廃番に。
で、現在の吉野家はというと、オイラが足を向けることはない。その理由は、メニュー全てに大量の科学合成カプサイシンを投入して味を誤魔化すような方針に転換してしまったから。20年ほど前までは、例えばお新香に入っていたのは天然の赤唐辛子の破片が少しだけだったから味覚が敏感なオイラでも違和感なく食べることができたが、いつの頃からか牛丼本体の煮汁をはじめとして味噌汁にまでカプサイシンを大量に投与して味を誤魔化すような方針に転換してしまった。
辛い=旨い、といった馬鹿げた辛口信仰に毒された物好きはいつの時代にも存在し、ケンタッキーでもレッドホットなる辛いだけシリーズを販売しているようだが、明らかに非健康的なこんなものが売れるのは日本と韓国くらいなものだろう。テレビ番組で何度も放映しているが、タンメンとかの激辛料理を食べたくなるのは味覚中枢が命の危険を感じるスリルを再び味わいたくなるという中毒症状からだそうだ。カプサイシンには毒性もあり農林水産省も警告を発しているというのにこのような辛いものばかり喜んで食べているのは味覚がバカになるだけでなく、発がんの危険性さえはらんでいる。オイラも一度は試してみるのだが、二度とお近づきになることは決してあり得ない。
辛い物好きな一部の客が大量に唐辛子を振りかけるのを問題視した吉野家の想像力欠如首脳陣が、それなら最初から化学調味料で辛くして唐辛子の消費量を抑えようとしたのが事の始まりかと思うのだが、このような短絡思考での味覚操作は文化遺産たる「日本食」とはほど遠い。